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ソウルマン

“温故知新を体現するミュージシャン”、それがエルビス・コステロである。

「HEY CLOCKFACE」ELVIS COSTELLO


2020年10月に発売されたエルビス・コステロの最新アルバムである。
前作『LOOK NOW』はジ・インポスターズとの共演であり、グラミー賞の最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバムを獲得したように高評価を得たのだが、今回は『LOOK NOW』から約2年が経過し、ソロ作品としてリリースされた。
個別の曲を振り返ってみる。

オープニングの「Revolution#49」は、中近東風の前奏で幕を開ける。
コステロにしては珍しく「歌」ではなく「語り」で構成されている。
本作にはこの曲を含めて3曲の「語り」で構成された曲が収められている。

「No Flag」は、一転してギンギンのロックである。
冒頭で「私に宗教はない 哲学もない 自分のものじゃないように思える頭いっぱいのアイディアと言葉があるだけなんだ」と歌っている。
私は「これは“コステロの本音”ではないか」と感じた。

「They’re Not Laughing At Me Now」は、淡々と聴かせるバラード調の曲である。
「もし私がクリスチャンなら」という歌詞がある。
コステロはクリスチャンではないでしょう。

「I Do(Zula’s Song)」は、ジャズ風のバラードである。
Zulaとはエリトリアの町のことらしい。もの哀しい雰囲気が感じ取れる。

「We Are All Cowards Now」は、ちょっと怖い曲である。
独裁者に支配された世界を歌っている?
コロナ詐欺、そしてその後に用意されている「ニューノーマルという名のアブノーマルなファシズム社会」を歌っている?

「Hey Clockface/How Can You Face Me?」は、50年代のジャズのような曲調である。
コミカルで、何故か懐かしさを感じさせる、不思議な曲である。

「The Whirlwind」「The Last Confession Of Vivian Whip」「What Is It That I Need That I Don’t Already Have?」「I Can’t Say Her Name」「Byline」は、どの曲も美しい極上のバラードである。コステロは、何故にこれほどの美しいバラードを次から次へと書けるのだろうか。「天才」と言ってしまったらそれまでなのだが、この男の恐るべき音楽センスには脱帽するばかりである。

本作を通して聴いて感じるのは、コステロのミュージシャンとしての才能だけでなく、常に新たな挑戦を試みようとするコステロのどん欲なまでの“音楽に対する拘り”である。
これまでもコステロはアルバムごとに“新しいサウンド”を表現し続けてきたが、今回はまた別の意味での“新しいサウンド”が感じ取れるのだ。
簡単に言えば、以下のようになる。

「ポップミュージック」+「中近東音楽」+「ジャズ」+「語り」

さらに言えば、以下のようになる。

「現代音楽」+「古典音楽」=「古いようで新しい音楽」

本作はかなりジャズを中心とした“昔のサウンド”の影響が強く感じられるが、コステロの父親がジャズミュージシャンであったことが相当影響していると思われる。
従来の“ポップミュージックの魔術師”としての顔に「ジャズ」と「中近東音楽」が加わり、さらには「語り」を加えることで「古いようで新しい音楽」を生み出したのだ。

古き良き時代の音楽を学ぶことで新しい音楽を知る。
“温故知新を体現するミュージシャン”、それがエルビス・コステロである。








評点:90点






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Posted byソウルマン

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