ルー・リード、ヴェルベッド・アンダーグラウンド

「俺は誰なのかと時々思う」「呼吸するために空気が必要であることを憎悪する」LOU REED

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「The Raven」LOU REED



エクスタシー」に次ぐ、2003年のルー・リードのアルバムである。
エドガー・アラン・ポーの人生をテーマにした作品であり、ルー以外の俳優やミュージシャンも参加しており、実際の歌劇は演じられなかったようだが、音楽アルバムというよりも「エドガー・アラン・ポーに関する歌劇の舞台音楽」といった方が正解なのかもしれない。
アルバム内でルーは自ら手記を掲載しているので、その一部を紹介する。

「私もポーを何度も読み返し、何度も書き換えては、同じ疑問をぶつけてきた。自分は誰なのだ。なぜ禁じられた方向へ引きずられていくのか、と。幾度となく、そんな苦悩と格闘しつつ、破壊への衝動、自分を苦しめたいという思いにさいなまれてきた」

「禁じられた方向」というのは、特殊な性嗜好のことを言っているのではないだろうか。
ルーの性嗜好ついては前にも書いたが、真偽のほどは不明だが、エドガー・アラン・ポーについてもそういった嗜好があったという話も耳にする。
詩人、小説家としての面はもちろんだが、そういった内的な面も併せて、ルーはポーに魅かれたのではないだろうか。
私はポーの詩や小説を読んだことがないので彼のことはよく分からないが、ルーはポーのことを、分野は違うとはいえ同じく卓越した才能を持ち合わせた表現者として、また、ルーと同様の“問い”を持ち続けた人物として、共感を覚えたのではないだろうか。
本作はルー以外の俳優による朗読も含まれており、ルーの単独アルバムというよりも、「ルーが監督・主演を務めたロック歌劇」としては秀逸な内容であることは間違いない。しかし、正直言って、音楽作品としては手放しに評価できる内容とは感じられなかった。
ルーは「自分が産み出した作品の中でも最高峰のものだ」と語っているらしいが、これは「ミュージシャン・ルー・リード」というよりも、「芸術家ルー・リード」としての「芸術作品」として、本作を捉えたルーの発言ではないか、と感じる。

私の関心事である音楽面において、特に印象に残った曲を紹介する。
オープニングのインスト曲である「オーヴァーチュア」からドラマチックなロックンロールの「エドガー・アラン・ポー」につながる冒頭のノリは、最高である。
次に、一転してスローな語り調の「コール・オン・ミー」も、味わい深い。
「ギルティー」は、オーネット・コールマンのアヴァンギャルドなサックスが炸裂している。
「ホップ・フロッグ」は、あのデヴィッド・ボウイが歌っている。短い曲だが、「俺は跳ぶカエル」と歌っている。アリゲーターやらカエルやら、ボウイは謎の人物である・・・。
「フー・アム・アイ?」は、本作のハイライトである。「俺は誰なのかと時々思う」「呼吸するために空気が必要であることを憎悪する」「肉体を離れ 自由になりたい」「お前は生命の神秘を解き明かしたいのだ 誰かの喉もとを切り裂いたり 心臓を取り出すことによって」と歌う、実に、鬼気迫るルーの思いが感じられる。

ルーは、限られた自分の生命の中で、「何故に自分という人間が存在しているのだろう」「この世界は誰が何のために創ったのだろう」といった、決して簡単には回答を得ることのできない“問い”を、追及したミュージシャンであったようだ。
恐らく、エドガー・アラン・ポーも同様にそのような究極の“問い”を追求した人物であったと、ルーは考えていたに違いない。
私はこういった“問い”を抱えた人間に、人間としての魅力を感じる。
アンパンマンの歌で「何のために生まれて 何をして生きるのか 答えられないなんて そんなのは嫌だ」という歌詞を書いた、やなせたかしも、きっと同様の“問い”を抱えていたのだろう。
私の大好きなロック歌手・パンタも、似通った“問い”を抱えていた人物である。
頭脳警察でデビューした(まだ22歳)頃、「それでも私は」という曲の中で、「俺には分からねえ 生きるということが」「愛と平和を叫ぶのが人生か」「真実を求め続けることが人生か」「暖かい加護に包まれた幸せな家庭が人生か」「お金をたくさん持ったエライ奴になるのが人生か」と、パンタは歌った。
こういった“問い”を追及することは、ここ数年の軽薄な時代においては、「ダサイ」(今はこの言葉も死語になりつつあるが)又は「ウザイ」と、判断されがちである。
「この世界の真実」「自分の人生の目的」「何のために自分が存在しているのか」、こういった一筋縄では解決できない“問い”を抱える人間は社会の隅に追いやられ、その日その日をなんとなく暮らすことが「カッコイイ」とされるのである。
このクレイジー・ワールドにおいては・・・。
こういった物事を真剣に考えることから目を背けた“空気のような感性”が主流になるように仕向けたのも、「彼ら」であろう。

物事を真剣に考えるんじゃない。
とりあえず目先の事だけを考えておけば、それでいいんだ!


あなたが大学入学前の学生なら受験。何のために受験勉強をするのかなんて考える必要はない。どの高校、大学に入学するか、それだけを考えておけ。
あなたが大学生なら就職。どういった企業に就職したら満足できる給料がもらえるか、それなりの“働きがい”を感じることができるか、それだけを考えておけ。
あなたが社会人なら出世。より多くの給料をもらえるように、周りの人間よりも上の地位に立つことで優越感に浸れるように、それだけを考えておけ。
あなたが定年前の社会人なら老後の楽しみ。人生の大半を会社に縛られてきたのだから、せめて老後ぐらいは“余生が楽しめる”ように、それだけを考えておけ。

「この世界の真実」「自分の人生の目的」「何のために自分が存在しているのか」なんてことは、奴隷であるお前らが、考える必要はないのだ!

このような「彼ら」に用意された奴隷人生に疑問を感じ、限られた人生の中で本当に重要な“問い”を追求し続けた人間に、私は拍手を送りたい。
ルー・リードは、その一人であった。














評点:70点





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