サム・クック

僕が憎んでいるのは、肌の色、宗教、国籍を問わず、立ち上がって主張する勇気を持たない人々だ

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「Mr.Soul サム・クック」ダニエル・ウルフ



2002年発売のサム・クックの伝記。ジャーナリストのダニエル・ウルフが書いている。
以前この書を買おうとしても買えなかったが、現在は購入できるようになっている。
サム・クックを愛する音楽ファンであれば、絶対に読んでおくべき書であるだろう。
以下、一部引用する。



*1960年の夏、ドロシー・キルギャレンのために書いた全米配信記事の冒頭で、サムは高まる公民権運動について、自分の意見を述べている。「僕はある夜、ジョージアで、一晩仕事に穴をあけてしまったときの事を決して忘れないだろう。なぜそういう事になったかというと、僕は人種差別のバスに乗る気はなかったし、白人のタクシー運転手で僕を飛行場から町まで乗せようとする奴はいなかった。そして黒人のタクシー運転手は空港にタクシーを乗り入れることを禁止されていたからだ・・・僕が憎んでいるのは」と彼は続ける。「肌の色、宗教、国籍を問わず、立ち上がって主張する勇気を持たない人々だ」。

サムは彼の一連のヒット曲の鍵は“観察力”だと語っている。声でも、メロディでもなく、観察力なのだと。

*一方、明らかにサムになりたがっていたのが若きオーティス・レディングだ。「ユー・センド・ミー」がヒットしていた時、オーティスは16歳でジョージアにいた。そして今、ファースト・シングル「ディーズ・アームズ・オブ・マイン」で、彼はリトル・リチャードとサム・クックのサウンドを一つにしようとしていた。レディングはサムのスタイル、独立、ソングライティングを敬愛していた。その短すぎたキャリアの中で、オーティスは「キューピッド」「チェイン・ギャング」を含むサム・クックゆかりの5曲をカヴァーしている。

*「(エイムズ・ストリートの)家に坐って、サムと話し合ったことをはっきりと憶えているよ」とバティストは回想する。「人種問題についても話した・・・ブラック・ムスリムとか、そういう事もね。どうしたら、僕達の同胞が抱える膨大な問題を解決できるのか。サムはそのことに本当に関心を持っていた」。
カシアスとマルコムの影響もあったが、サムの関心は彼自身のバックグラウンドの中で培われた自尊心と独立心に根ざすものでもあった。彼の友人たちは、彼が以前にも増して黒人史、アフリカ史の本を読んでいるのを目にするようになった。

*カーティス・ウォマックは、サムがアポロの組合の男たちと大喧嘩していた事を憶えている。男たちが「黒んぼ(ニガー)め、貴様なんかゴキブリみたいに叩きつぶしてやる!」と叫ぶと、サムは怒り狂って言い返していた。「あいつら、組合の取り決めで上前をはねてるだけじゃないか! 人の金をピンハネしやがって!」カーティス・ウォマックによれば、サムはジェイムズ・ブラウンやレイ・チャールズなどのエンターテイナー達と、組合の黒人版を作ろうと話し合っていたと言う。R・H・ハリスのカルテット連合のようなものだ。

*成功の秘訣を訊かれて、サムは自分の声やゴスペルのスタイリングには触れずに、ソングライティングの話をした。「秘訣はやっぱり観察力だと思いますね。今、何が起きているかを観察すれば・・・我々の生きている時代を人々がどう考え、どう判断しているかが解れば・・・そうすればいつでも、皆に受け入れられる歌が書けるんじゃないかと思うんですよ」。

*「フェラーリの中に一瓶のウィスキーを見つけた。口は空いていたが、殆ど残っていた。私は瓶を見た。これも私から見れば奇妙な事だった。サムは車にウィスキーを置いていた事はなかったからね」。

*家につくと、S・R・クレインはバーバラに再びサムの居所をきいた。当時の新聞記事によると、鎮痛剤を多く飲んでいたバーバラは、知らない、と答えたという。「知らないだって!?」クレインが警察に電話すると、遺体は死体保管所にあった。司法解剖がその日の朝10時頃に行われていた。神を畏れるテキサス人である彼は激怒した。「何で彼を保管所なんかに入れるんだ!? 身寄りがない人が入る所じゃないか! サム・クックのような男は保管所なんかには入らないんだ! どうしてそんな事をするんだ?」誰も遺体を引き取りに来ないからだった。

*ニュースが明らかになったのは朝刊にはもう遅い時間だったが、ラジオとテレビはその話題でもちきりだった。彼らは警察の説明をそのまま報道していた。サムはリサ・ボイヤーを誘拐し、レイプしようとして、モーテルの管理人のバーサ・フランクリンに殺された。低俗な部分が強調された。半裸のサムがいかにしてフランクリンがいる管理人室にやって来て、ドアを蹴破り、55歳の黒人女性と取っ組み合いの末に撃たれたか。最初の警察の発表では、リサ・・・別名エリーシャ・ボイヤーは、売春婦で、様々な前科があった(警察は後で、彼女は前科はなく、彼らがボイヤーを他のアジア女性、リサ・リーと間違えたための誤報だと発表した)

*ヒューストンのフォワード・タイムズ紙は、リサ・ボイヤーがコールガールだったこと、そして、バーサ“ブランチー”フランクリンが以前に何度も逮捕されたことのある人物だという事実を暴露、さらに遺体のスポーツ・ジャケットからは1500ドル以上の現金がなくなっていたことも明らかにした。

*ロサンゼルス・センティネル紙はクリスマス・イヴの号の一面に、「真相追及を求めて」と題する記事を掲載した。同紙の交換台には質問の電話がひっきりなしにかかってきた。サム・クックの金、クレジット・カード、免許証はどうなったのか、なぜ弾丸は左の脇の下から右下へ抜けていたのかなぜバーサ・フランクリンは自分で警察の通報せずに、モーテルのオーナーのイヴリン・カードに電話させたのか。ミス・ボイヤーが誘拐されたと警察に電話したとき、クックはすでに死んでいたのか。ミス・ボイヤーは彼が殺されるのを目撃したのか。センティネル紙は「これらの質問に対する答えは出ていない。ロサンゼルスからニューヨークまで、全ての新聞が、同じ疑問を抱いている」と締めくくっている。

*一方、バーバラ・クックと20歳のボビー・ウォマックは、ロサンゼルス・センティネル紙によれば、「おおっぴらにデートを重ね、地元のナイトクラブや社交行事に連れ立って姿を見せるようになっていた」。ボビーは新聞記者たちに、長年バーバラに憧れていたが「彼女は全く気づかなかった」と語った。彼女が人生の危機にあったとき、「僕は彼女のそばにいた。彼女はそのとき、本当に誰かを必用としていた・・・」そして彼は彼女に結婚を申し込んだ。サムとの友情に触れて、ボビーは「彼も、僕にそうして欲しかっただろうと思う」と言い切ったものの、バーバラがその申し出にショックを受けたことを認めた。彼女が心を決めるのに数週間を要したが、1月の終わりに・・・夫が撃たれてから2カ月と経たないうちに・・・バーバラはコラムニストのガートルード・ギブスンに、婚約したことを告げた。バーバラはサムの遺産手続きが完了する二日後の2月25日に挙式するつもりだと発表した。

*人々は当然、ボビーとバーバラはサムが死ぬ以前から怪しかったのではないかと勘ぐり、噂が広まった。ボビー・ウォマックが記者に「僕達は今でも、(銃殺事件は)仕組まれたものだと思っている」と語ったときには、多くの者が、未亡人と若い愛人も一枚噛んでいたのではないかと囁いた。

*警察が最初に通報を受けたのは午前3時9分、リサ・ボイヤーからだった。彼女は自分が何処にいるのかも知らず、(「たぶんウェスタン・アヴェニューの近くよ・・・ここはすごく暗いの」)誘拐されたことしか解からないと言った。イヴリン・カードからの通報は3時17分。証言によれば、彼女は銃殺の直後に通報している。つまりリサ・ボイヤーが電話ボックスで待っていた10分の間に、サム・クックは射殺されたことになる。現場から半ブロックの所にいながら、リサ・ボイヤーは明らかに、22口径の3発の銃声を聞いていない・・・通りに一番近かったバーサ・フランクリンのドアが、開けっ放しになって蝶番にぶら下がっていたにも拘わらずである。警察の捜査でも、証言台に上ったモーテルの客一人を含めて、銃声を聞いた証人を見つけることは出来なかった。

*事実、アレン・クラインがマスコミに語ったところでは、サムのレコードのセールスが驚異的に伸びたお陰で、遺族はその後、2年間、年間15万ドルの印税収入を保証された。バーバラ・クックは事件の調査を望んでいなかった子ども達を不安にさせ、必然的に彼女とサムの私生活に立ち入る事になるからだ。

未確認の情報によれば、バーサ・フランクリンはミシガンに転居し、サムの18カ月後に亡くなった
リサ・ボイヤーは、南カリフォルニアを転々としていた。1979年、彼女は愛人のルイス・レイノルズを射殺したかどで第二級殺人罪の有罪判決を受けた。レイノルズは椅子で彼女を襲ったのだ。彼女はフロンテラ市のカリフォルニア州女子刑務所で2年から5年の懲役を言い渡された。

*サム・クックは、多くのシンガーが目標とする存在だ。そして彼らの殆どが、サムのもとに立ち返ってエネルギーを得ている。
<キース・リチャーズ>





(管理人)
427頁に及ぶ大著のうち、引用した箇所の半分は、その死に関する記述となった。
それだけサムの死に関する「公式ストーリー」は、明らかに嘘・偽りに満ち溢れている。
私も以前からサムの死については疑いを感じていたが、本書を読んで、その疑惑は「黒い陰謀の存在」に発展した。
ここに紹介したのは本書のほんの一部であり、これ以外にも疑惑は下記のように存在する。

・ロサンゼルス地裁における検死官の審問も形式的なものであり、証人の話に矛盾があるにも関わらず、検死官も、地区検察局も、弁護士も、反対尋問をしなかった。
・サムはマネージャーのアレン・クラインに不信感を持つようになっており、首にしようとしていた。
・サムはバーバラと離婚しようとしていた。


誰がこの「計画」の主犯だったのかは不明だが、マネージャーだったアレン・クライン、妻のバーバラの両者には疑惑を感じざるを得ない。特に妻のバーバラについては疑惑満載である。サムの遺体を死体保管所に入れたこと、サムの死から2カ月と経たないうちに再婚したこと、事件の調査を望まなかったことなど、「普通の感覚」とは思えない。再婚相手のボビー・ウォマックについても、疑惑を感じざるを得ない。ボビーは昨年他界し、「ラストソウルマン」として追悼記事も書いていた存在であるだけに、複雑な心境である。
ただ仮にバーバラが犯行に関わっていたとしても、単独犯でないことは間違いないだろう。
背後には「サム・クックを始末したがっていた巨悪」が存在していたのだろう。
その勢力は、音楽業界を牛耳っていた白人勢力、それも警察も司法関係者も操ることのできる存在、ズバリ「彼ら」であると判断する。
オーティス・レディングの記事でも触れたが、明らかに黒人ミュージシャンは「彼ら」に搾取されていた。稼ぎの大半を「彼ら」に盗まれていたのである。
サムはそのルートから脱出しようとしていた。サムはさらにモハメド・アリやマーティン・ルーサー・キングやマルコムXと親交を持ち、黒人解放運動にも関わろうとしていた。
「彼ら」はこういった一連のサムの行動を、決して許さなかった。
これが、サムを謀略に貶めた「彼ら」の動機ではないだろうか・・・。
サムの死が33歳だったこと、その死の3年後の同日にオーティス・レディングが飛行機事故で他界したこと、これらは全て「偶然」ではないと感じる。
白人ミュージシャンも「彼ら」に利用されているのは同じだろうが、黒人ミュージシャンと比べると明らかに優遇されているのではないのだろうか。「黒人ミュージシャンを「彼ら」白人勢力が搾取しているという事実」は、現在も続いているのは間違いないだろう。
黒人音楽が大好きな私だが、こういった音楽業界の闇の部分を、本書は改めて伝えている。
サム・クックに限らず、黒人ミュージシャンがこれまで届けてくれた音楽があまりに素晴らしい反面、こういった「哀しい事実」が背後に存在しているということを、我々音楽ファンは理解しておかなければならないだろう。その部分を無視して、単に音楽面の素晴らしさのみを見ているだけでは、偉大な黒人ミュージシャンの本当の想いを理解することはできないだろう。
著者のダニエル・ウルフは、なんと本書が著者としてのデビュー作であるとのことだ。本書はサムの実像に迫った秀逸な内容であり、多大な努力・調査をされたものだと感じます。本書のおかげで、「サムの本当の想い」に近づけたような気がします。是非、映画化してもらいたいものです。

最後に、「アンチェインド・メロディー」でサムを忍んでください。





評点:80点









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